ガス給湯器
ご家庭で入浴したり洗い物をしたりするときには、お湯が欠かせません。
そのお湯をつくる機械が「給湯器」ですが、ひと口に給湯器と言ってもさまざま種類があることをご存じでしょうか?
今回はガス給湯器の種類とお湯をつくる仕組み、さまざまな機能について、詳しく解説します。
この記事をご一読いただくと、
ご自宅に合ったガス給湯器の選び方が分かり、トラブルが発生したときにも慌てずに対処できるようになります。
現在主流となっている「エコジョーズ」給湯器の仕組みについても解説しますので、ぜひ最後までお読みいただき、ガス給湯器の選定にお役立てください。
また、ガス給湯器が故障した時、
- どこに頼めばいいのか?
- どのように連絡したらいいのか?
- 近所の修理会社・くらしのマーケット等
も追加しました。
ガス給湯器とは
ガス給湯器とは、ガスが燃焼する火力で水道の水を加温しお湯をつくる機械です。
給湯器には、大きく分けて瞬間式と貯湯式の二種類があります。
- 瞬間式給湯器・・・ガス給湯器、エコジョーズ、電気瞬間湯沸器
- 貯湯式給湯器・・・エコキュート、エコウィル、エネファーム、電気温水器
ガス給湯器は瞬間式給湯器に分類されます。
給湯配管に水を流すと同時に水流センサーが感知しガスバーナーを着火させ、燃焼した熱で配管を熱して、瞬間的にお湯をつくり出す方式です。
エコキュートなどの貯湯式給湯器と違って、貯湯タンクを必要としません。
また、水道管の水圧がそのまま利用できて加圧ポンプが不要になるため、本体を小型化できて設置に大きなスペースを必要としません。
必要なときに必要な分だけお湯をつくる、経済的な給湯方式と言えます。
《ガス給湯器のメリット》
ガス給湯器のメリットをまとめると、以下のようになります。
- お湯を貯めておくタンクが不要
- 必要なときに必要な分だけお湯がつくれるため経済的
- 貯湯式の弱点である「湯切れ」が発生しない(連続してお湯をつくり続けられる)
- 水圧が一定に保たれる
- 構造がシンプルで本体が小型、設置スペースが最小限で済む
ガス給湯器の仕組み
ここでは、ガス給湯器からお湯が出る仕組みについて解説します。
- お湯用の蛇口水栓を開ける
- 配管内の水流をセンサーが検知し、ガス給湯器内のバーナーが着火する
- ガス給湯器内の銅管に水が流れ、その銅管をバーナーの燃焼で熱し水をお湯に変える
- リモコンで指定された温度になるように給湯器内で水を混ぜる
- 蛇口からお湯が出る
ガス給湯器は、水を直接ガスで加温している訳ではありません。
銅管を通る水をガスバーナーで加温してお湯をつくり出しています。
リモコンで指定された温度のお湯をつくるためには、元の水道水の温度から割り出される適切な火力とそれに対応したガス量を調整しなければなりません。
その制御のための電子回路が実装されている精密機器でもありますので、運転には電源を必要とします。
ガス給湯器内の主な部品とその役割について、下記の表にまとめてみました。
部品 | 役割 |
電子基盤 | 温度・水量・ガス量などの様々な環境情報を計測し給湯器を適切に動作させる信号を出す電子回路 |
水量センサー | お湯配管内の水流を検知し、給湯器を作動させるスイッチ |
ファンモーター | ガスを燃焼させるために必要な空気をバーナーに送り込むプロペラファン |
イグナイター | ガスバーナーの着火装置 |
ガス電磁弁 | 電気信号でガス管を開閉する弁 |
ガス比例弁 | 電気信号でガス流量を調整する弁 |
水量サーボ | 設定出湯量を調節する装置 |
温度ヒューズ | 異常加熱すると断線して給湯器を停止させる安全装置 |
熱交換器 | 銅管をガスバーナーで加温し水をお湯に変換する部品 |
サーミスタ | 温度測定センサー |
水位センサー | 浴槽内の水圧を検知して浴槽水位を保つセンサー |
循環ポンプ | 浴槽内のお湯を給湯器に戻して再加熱した後、浴槽に戻すポンプ |
凍結防止ヒーター | 零下に近い気温になると凍結予防のため給湯器内を加温する電気ヒーター |
COセンサー | 不完全燃焼で一酸化炭素(CO)濃度が上昇した際に、給湯器の運転を緊急停止させるセンサー |
ガス給湯器の種類
ガス給湯器の種類には、その用途によって
- 風呂給湯器
- 給湯専用機
- 風呂釜
- 給湯暖房熱源機
があります。
また、設置の方法や場所によってもいくつかのタイプに分けられます。
《ガス給湯器の用途別種類》
■風呂給湯器
1台で住宅内の台所や洗面台、シャワーなどの給湯と、浴槽の湯張り・追い焚きの機能を備えたタイプの給湯器です。
入浴しながらでも、複数の場所で同時にお湯を使用できます。
後述しますが、浴槽の湯張り方法により「セミオートタイプ」と「フルオートタイプ」に分けられます。
浴槽には追い炊き用の循環配管と金具の取付が必要で、穴は1つ開けられています。
■給湯専用機
蛇口からお湯を出す機能に絞ったタイプで、浴槽の湯張り・追い炊き機能はありません。
給湯器と蛇口が一体となった、いわゆる「瞬間湯沸かし器」も含まれます。
■風呂釜
浴槽に水を貯めておき、それを沸きあげてお湯にするもので、いわゆる「バランス釜」です。
高度成長期に多数建設された公団住宅の標準仕様で、一時は全国的に広まりました。
残り湯の追い炊き機能やシャワー付きのタイプもあります。
浴槽には出湯用と戻り用の配管が必要で、穴は2つ開けられています。
現在は屋外壁掛け型の給湯器が主流になっているため大幅に減少傾向にあり、主に既存品の改修用途で採用されています。
浴槽には追焚用として2つの開口が必要で、原則としてユニットバスには対応できません。
一般的な給湯器と比較して給湯能力が小さく、湯張りにかかる時間が長いのも弱点です。
■給湯暖房熱源機
風呂給湯器に暖房用の不凍液を加温する機能を加えたものです。
加温された不凍液は、暖房用の専用配管を通じて家庭内の床暖房や温水ルームヒーター、浴室暖房乾燥機などの熱源として利用できます。
給湯器と暖房熱源機を2台並べるよりも省スペース化でき、1台にまとめることでコストダウンが可能です。
ただし、故障すると給湯も暖房も同時に止まってしまうため厳寒期にはリスクが伴います。
《戸建て住宅向けのガス給湯器》
■屋外設置タイプ
・壁掛けタイプ
屋外の建物外壁に取り付けるタイプで、現在もっとも流通している給湯器の取付形式です。
ガスを屋外で燃焼させるため、排気が室内に入らず安心して使用できます。
ただし、風雨や雪、炎天下などの過酷な環境に晒されると寿命が縮まりますので、屋外でも設置場所には注意が必要です。
・据置タイプ
建物外壁ではなく、地面にブロック等で基礎を置き、その上に据え付けるタイプの給湯器です。
浴槽から近い位置の外壁に設置できるスペースが無い場合などに採用されます。
■屋内設置タイプ
・FF式給湯器
FF式とは、強制吸排気方式のことです。
給湯器本体は室内に設置し、そこから給気と排気の2本のダクトを屋外に向けて配管します。
燃焼に室内の空気を使わないため、屋内設置の弱点であった換気の必要がありません。
豪雪地などで屋外に給湯器を設置できないときに採用されることがありますが、設置スペースを室内に用意しなければならず、狭小化している現在の住宅事情では敬遠される傾向にあります。
・瞬間湯沸器
ガス瞬間湯沸器は、主に台所のシンクに設置し、ボタンを押すとシャワーノズルからすぐにお湯が出る便利な給湯器です。
コンパクトで省スペースに設置できるため、今までお湯が出なかったところにも導入が容易です。
室内でガスを燃焼するため換気が必要で、気密化が進んだ現代の住宅にはおすすめできません。
■浴槽隣接設置タイプ
浴槽の背面に位置する屋外に設置する給湯器です。
ブロックなどの基礎の上に設置し、浴槽に貯めた水を沸かすために使用します。
風呂釜(バランス釜)の外部設置バージョンと考えると分かりやすく、浴槽の穴は2つになります。
《マンション向けのガス給湯器》
■ベランダ壁掛タイプ
ベランダ壁掛タイプの給湯器は、マンションやアパートなどの集合住宅に設置される給湯器の一種で、ベランダやバルコニーに壁掛けで取付するタイプです。
■PS(パイプスペース)標準設置タイプ
PS(パイプスペース)設置型の給湯器は、マンションやアパートなどの集合住宅で、ベランダではなく外廊下側に設けられたパイプスペース、もしくはパイプシャフトと呼ばれる、電気・水道・ガスメーターなどが納まる専用スペース内に取り付けられた給湯器のことです。
PSの標準サイズは決まっており、スペース内に収まるように給湯器のサイズや排気口の位置が設計されています。
エコジョーズ給湯器とは?
政府の試算によると、家庭で消費されるエネルギーの約1/4は給湯に使われています。
政府の掲げる「2050年カーボンニュートラル」目標の達成に向けて、家庭の給湯に使われるエネルギーの削減は重要な課題です。
ガス給湯器の技術性能は年々進歩しており、省エネのために熱効率を飛躍的に高めた潜熱回収型給湯器の総称である「エコジョーズ」が開発されています。
エコジョーズ給湯器を導入すると、次の省エネルギー効果が見込めます。
- 給湯熱効率が従来の80%から95%へアップ
- ガス使用量が従来より15%ダウン
- 二酸化炭素(CO2)排出量を15%削減
エコジョーズ給湯器の効率化の仕組みについて解説します。
給湯器内でガスを燃焼させてお湯を作るときには、水と一緒に周辺の空気も同時に温められます。
従来のガス給湯器の場合はこの温まった空気を外に排出して捨てています。
この排気は200℃にもなり、せっかく作った熱が利用されずに無駄になってしまうという問題点がありました。
エコジョーズ給湯器は、この廃熱を再利用して水の予熱に使用します。(予熱に使用した後の排気は約50℃まで下がります)
そうすることによって加温に必要なエネルギーを削減でき、従来よりも少ないガス消費量で効率よくお湯をつくることができるという仕組みです。
エコジョーズ給湯器は少量のガスで効率よくお湯を沸かすことができるため、ガス料金の節約にもつながります。
ガス給湯器の交換の際には、エコジョーズを検討してみてはいかがでしょうか。
オートタイプ・フルオートタイプ
風呂給湯器には、お風呂の自動湯はり、保温、足し湯、追い焚き機能など、さまざまな機能があります。
その搭載する機能によって、「オートタイプ」と「フルオートタイプ」に分けられます。
オートタイプ
「自動湯はり」スイッチを押した後、設定水量までお湯が貯まると自動的にストップします。
その後設定した時間内は、お湯が冷めたら自動で追い炊きし、湯温を一定に保ってくれます。
湯温を一定に保つ時間は、ノーリツ製給湯器の場合は0〜9時間の間で1時間単位で設定が可能です。
フルオートタイプ
「自動湯はり」スイッチを押した後、設定水量までお湯が貯まると自動的にストップします。
その後設定した時間内は、お湯が冷めたら自動で追い炊きし、湯温を一定に保つのはオートタイプと同じですが、フルオートタイプはお湯が減った場合に自動的に足し湯を行い、水位を一定に保ちます。
家族間でお風呂に入る時間がバラバラの場合は、最初の人から最後の人まで快適に入浴できるタイプの給湯器です。
給湯器の号数とは?
ガス給湯器の選定にあたっては、ご家庭の家族構成やお湯の使い方などに合わせて必要な給湯能力を見極める必要があります。
ガス給湯器の給湯能力は号数で表され、「1リットルの水の水温を、1分間に25℃上昇させる能力」を1号と定義しています。
例えば20号の給湯器であれば、水道管の水温が15℃のとき、1分間に40℃のお湯を20リットルつくりだすことができるということです。
一般的な口径13mmの蛇口であれば、通常の流量で1分あたり6リットル程度の水が流れますので、同時に3か所でのお湯の使用に耐えられるという目安になります。
水温の低い冬季では、湯温を上げると同時使用可能な箇所は1〜2か所になってしまいます。
家族構成や、各自の生活時間にもよりますが、一般的には給湯器1台で対応可能な居住人数は次のような目安になります。
- 16号給湯器:1人
- 20号給湯器:2~3人
- 24号給湯器:3~4人
給湯器の選び方
給湯器には、お住いの形態と家族構成やライフスタイルに合わせて様々な選択肢があります。
ここまで解説した内容を基に、給湯器を選ぶ際のポイントを整理してみました。
- 用途を選ぶ(風呂給湯器・給湯専用機・風呂釜等)
- 設置方法を決める(壁掛けタイプ・据置タイプ等)
- エコジョーズを導入するか検討する
- 風呂給湯器の場合はオートタイプかフルオートタイプかを検討する
- 給湯能力(号数)を決める
給湯器の買い替え時期は?
給湯器の設計寿命は10年と言われています。
主要メーカーの寿命に対する見解は下記の通りです。
【ノーリツ】
ガス機器や石油機器には、安全上支障なく使用できる標準期間である「設計上の標準使用期間」を定めています。
使用頻度や使用環境などお客さまの状況により異なりますが、標準的な使用条件のもとで使用した場合の設計上の標準使用期間は、家庭用で製造から10年と設定しています。
【リンナイ】
ガス給湯器が標準的に使われた場合、安全に支障なく使用できる年数(設計上の標準使用期間)を10年と定めています。
10年を越えますと経年劣化のリスクが高まり、故障や不具合の起きることがあります。万が一の場合の備え、10年たったら点検または取替えをおすすめします。
ここで言う「10年」は保証期間(※)ではないことに注意が必要です。
10年を目安として、部品の交換等の修理対応は難しくなるということです。
給湯器が壊れてから修理を依頼し、最終的に交換せざるを得ない判断になると、お湯が出ない・お湯が使えない期間が1週間以上になることもあり、冬場などは特に大変です。
故障時のリスクを避けるために、10年を超えた給湯器は故障する前に点検し交換するのが無難でしょう。
※「BL認定品」のマークがある給湯器であれば、メーカー各社とも購入もしくは引き渡し日より2年間の製品保証期間を設けています。
ガス給湯器:まとめ
ここまで、ガス給湯器の種類と仕組み、それぞれの特徴について解説してきました。
ガス給湯器は設置場所と機能、給湯能力に応じて非常に多くのラインナップがあります。
その中からベストの1台を選定するには、豊富な経験と実績を持つガス給湯器の専門業者の意見が頼りになることでしょう。
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