日本の都市部には数多くのマンションが立ち並んでいますが、
その一方で「限界マンション」という言葉を耳にすることが増えてきました。
限界マンションとは、
維持管理が困難になったマンションのことを指し、その原因や対策、未来について深掘りしていきます。
特にタワーマンションは、
その高層から見る景色や豪華な共用施設、セキュリティの充実などから、
多くの人々にとって魅力的な住まいとされていますが、
その一方で、タワーマンションが抱える潜在的な問題が”限界マンション”でもあります。
この記事では、
マンションが抱える限界マンションとなる可能性のある問題について
- 高齢化と空室化
- 大規模修繕の問題
- 建て替えの問題
- 投資目的で購入されたマンションの問題
売却できない・賃貸できないリスク
などを取り上げます。
これらの問題を理解し、適切な対策を講じることで、マンションでの快適な生活を維持することが目的として紹介します。
限界マンションとは?
限界マンションとは、
その名の通り、維持管理に限界がきてしまったマンションのことを指します。
限界マンションと築年数は密接な関係があり、
一般に、築30年〜50年のマンションは限界マンションのリスクが高まります。
建物の老朽化が進み、大規模な修繕が必要になる一方で、それに対応するための資金や人的リソースが不足するためが原因です。
空室の増加によって管理組合を運営していくことが困難になってしまった状態、それが限界マンションです。
限界マンションの原因
集合住宅であるマンションには、
多くの人が住み、管理費・修繕積立金でマンションを管理している以上、健全に運営されていくイメージがあります。
しかし、限界マンションは、
時間とともに、そのリスクは上がり、気づいた時は、後戻りできないのが悩ましいところです。
限界マンションになる原因としては、
- 居住者の高齢化
- 建物の劣化
- 空室の増加
- 建て替えに対する賛成が得られない
などが挙げられます。
これらの要因が重なると、
マンションの維持管理が困難になり、限界マンションとなる可能性が高まります。
以前、
などの記事を紹介しました。
空き家問題は、田舎の戸建てだけでなく、マンションにも広がっています。
- 古いマンションの相続拒否・相続放棄
- 所有者が行方不明
だけでなく、
管理が杜撰になったリゾートマンションのように、廃墟化に向かっているマンションもあります。
空室が目立つようになれば、
不審者が住みつきやすくなり、犯罪の温床となる可能性があります。
また、一戸建てよりも規模が大きいマンションでは、問題が複雑化しやすく、解決が難しい側面もあります。
限界マンションの事例
限界マンションは、
マンション空室問題・最悪、廃墟化マンションに突き進むリスクの高いマンションです。
具体的に、限界マンションの事例をピックアップしてみました。
限界マンションの事例:設備の陳腐化
新築時は最新の設備だったマンションも、20年、30年経過すると陳腐な設備になってしまうものです。
最近の新築マンションには当たり前となっている、オートロックや宅配ロッカーといった設備が完備されていないと、どうしても陳腐に見えてしまい、賃貸に出しても入居者が決まらない原因となってしまいます。
限界マンションの事例:修繕積立金・管理費の未納
通常、設備の入れ替えや追加については、修繕積立金などから支出します。
しかし、滞納などで修繕積立金の十分な金額が貯まっていないと、導入したくてもできないといった状況に陥ります。
また、管理費の未納が増えれば、管理会社の仕事の質も下がります。
清掃・掃除、エントランスの対応など、最悪の場合、管理会社の解約、住民での管理をせざるを得ない状況となります。
限界マンションの事例:修繕積立金がない・大規模修繕工事の計画が立たない
限界マンションに限らず、今、起こり始めている修繕積立金不足問題。
マンションのお化粧、価値を維持し老朽化・劣化をメンテナンスする重要な工事の計画立たない以上、マンションの寿命を住民自ら早めていることに他なりません。
関連ページ:修繕積立金不足のマンション
限界マンションの事例:建て替えができない
昭和の頃に建てられたマンションについては、本来建て替えていく方向が妥当なところですが、容易に建て替えられないのが集合住宅であるマンションです。
★建て替えに必要な4/5以上の賛成が得られない
★建て替えに必要な修繕積立金が貯蓄できていない
などから、マンションの価値は日々下がっていきます。
限界マンション:地方と都市部
今まで空き家問題は、田舎・郊外の問題のイメージが強かったのは事実です。
しかし、限界マンションの問題は地方だけでなく、
東京や大阪、福岡、京都などの都市部でも発生しています。
特に都市部では、人口の流動性が高く、マンションの需要と供給のバランスが崩れやすいため、限界マンション化のリスクが高まります。
《限界マンションの未来》
スラム化のリスク
空室が増えた限界マンションは、賃貸需要・売買需要ともに相場が関係なくなります。
維持管理費を確保するために、安くして入居者を集めるなど、これにより貧困層が集まり、さらにスラム化のリスクが増えます。
廃墟化の可能性
スラム化したマンションは、最終的に手がつけられなくなり、廃墟になるのを待つしかなくなる可能性があります。
これは、維持管理が行き届かなくなり、建物が荒廃していく結果を招きます。
公費での解体
廃墟となったマンションは、最終的に公費で解体されることが考えられます。
ただ、居座るなど迷惑行為等の問題もあるため、自治体も戸建てには手を付けますが、集合住宅には後ろ向きです。
高齢化社会から、立地の選定がより重視され、
日本を大きく成長させた団塊世代、ベビーブーム世代が、
終の棲家としてマンションを選択する人が増えているのは、人口と土地の問題から自然な流れかもしれません。
ただ、出口戦略(亡くなった時・相続)が不透明なため、
このままいけば、限界マンション乱立、一番の被害を被るのは他の区分マンション所有者になることは間違いなさそうです。
限界マンション対策
- 限界マンションを増やさないためにはどうすればいいのか?
- 空室問題・廃墟化を食い止めるためには何をすればいいのか?
限界マンション = 築年数 ではありません。
維持管理が問題なく進めることが出来れば、何の問題もありません。
そのため、20年・30年・50年先を見据えた管理、また、国や自治体のサポートも必要となります。
そこで、限界マンションの対策を挙げてみました。
限界マンション対策:管理組合の活性化
管理組合が健全に機能することで、マンションの維持管理が適切に行われ、限界マンション化を防ぐことが可能です。
”マンションは管理を買え”という格言があります。
これは、管理会社の仕事の質だけでなく、
マンションの住民の民度・モラルも含まれます。
- ゴミ置き場がキレイなのは、日ごろのゴミの出し方・分別の継続があってのものです。
- 人間関係のトラブルは、住民の分断にまで発展することがあります。
- タワマンカースト・ママカーストがクチコミサイトで有名になれば資産価値にも影響が出ます。
管理組合の活性化には、居住者の積極的な参加とコミュニケーションが必要となります。
参考サイト:
マンショントラブル まとめ
タワマンカースト・ママカースト
限界マンション対策:建て替え費用の積立・運用
建て替えが必要になる前に、建て替え費用を積み立てておくことも一つの対策となります。
修繕積立金は、ただ単に銀行に預金しておく必要はなく、リスクを考えて運用することも可能です。
大規模マンションの場合、数千万円・数億円の運用となるため、建て替えの一部補填になります。
限界マンションになる前にマンション売却
マンションの売買は、日々、行われています。
- 住宅ローンを返済中でも売却は可能です
- 転勤等で、急な生活の変化から売却を進めている方もいます。
- コロナで給料が減った・住宅ローンが返済できない方の売却も増えています。
- 住宅ローン金利上昇リスク(変動金利)から売りを検討している方もいます。
限界マンションリスクを考えてのマンション売却も1つの選択です。
ただし、限界マンションになると買い手がつかなくなります。
- 【◎】修繕積立金不足から徴収金額の変更を変更
- 【〇】築30年以上(売却の支障は最小限)
- 【▲】区分所有者が高齢者だらけ
- 【▲】大規模修繕工事の計画が立たない
- 【×】修繕積立金・管理費未納者増
- 【×】空き家状態・管理不能
マンション売却は、
不動産市況のタイミングで有利・不利、成功・失敗が大きく分かります。
バブル崩壊後、東日本大震災後は、叩き売りでも売れ残る自体でした。
関連公式サイト
マンション政策の現状と課題:国土交通省
限界マンション:記事まとめ
限界マンションは、日本の地方だけでなく都市部でも増えている問題です。
築年数が進むとともに、そのリスクは増大します。
しかし、適切な対策を講じることで、この問題は克服可能です。
マンションの所有者や管理者は、早期の対策を心がけ、良好な住環境を維持することが求められます。
少なからず言えることは、”限界マンション”となってしまったら”おしまい”です。
元メガバンク融資課出身、バブル時代に不動産コンサルティングに従事し、2000年、会社設立後、底地ビジネス・事務所の立ち退き裁判等も経験した宅建士と共に立ち上げ、現在、不動産にまつわるサービスの紹介、口コミ・筆者の感想を加え紹介しています。