囲い込みとは、一言で言えば「情報の独占」です。
不動産業界において、特定の業者が物件情報を独占し、他の業者や顧客から隠蔽する行為を指します。
この行為は、業者の利益追求の結果として行われることが多いですが、売り主や買主、そして不動産業界全体の信頼性に悪影響を及ぼすことが指摘されています。
今回は、にわかに問題となっている「囲い込み問題」について、
不動産・マンション売却においての弊害を紹介したいと思います。
ちなみに、介護施設の“囲い込み”ではありません。
早く売れない、高く売れない理由の1つが「囲い込み」かもしれません。
問題になっている囲い込み
実は今始まったものではなく、昔から当たり前のように行われていました。
別に、違法なことではないということで、
業績を上げるための手法として、悪しき慣習として今に残っているものです。
(*度を行き過ぎた内容によっては罰則規定(宅建業法)が設けられています)
三井不動産、住友不動産、東急不動産ホールディングス傘下の大手仲介3社
中でも「三井のリハウス」で知られる三井不動産リアルティの件数は圧倒的に多い。調査件数189件のうち、囲い込みを行っていたのが40件。つまり5件に1件以上を囲い込んでいたことになるという噂も・・・・。
参照:ダイヤモンドオンライン
不動産の囲い込みとは
【囲い込みの背景】
16世紀から18世紀のイギリスで行われた「エンクロージャー」は、共有地を個人の土地として囲い込む行為を指します。
このエンクロージャーは、土地の集約農業化を目指す地主たちが、共有地を私有地として確保するための手段として行われました。
この時期、ヨーロッパ全体で農地の私有化が進められ、農民たちは自らの耕地を失い、労働者として都市部へと流入することとなりました。
このエンクロージャーの動きは、囲い込みの概念の起源とも言えるでしょう。
現代における不動産の囲い込みは、
不動産情報を独占することで利益を最大化しようとする行為として存在します。
特に、不動産業界においては、一部の業者が物件情報を独占し、他の業者や顧客から隠蔽することで、仲介手数料や利益を独り占めしようとする動きが見られます。
この現代の囲い込みは、消費者の利益を損なう可能性が高く、業界の健全な発展を阻害する要因ともなっています。。
囲い込みを詳しく解説
その前に、簡単に不動産仲介ビジネスを簡単に説明します。
- 不動産(家・マンション)を売りたいオーナー
- 不動産(家・マンション)を買いたい人
この仲介を不動産会社が行います。
物件が売れれば・売買締結すれば、
- 売り主から3%(上限)の不動産仲介手数料
- 買主から3%(上限)の不動産仲介手数料
が発生します。
*宅建業法の仲介手数料無料の上限:3%
これを頭に入れてもらって「囲い込み」を具体的に説明すると、
- 情報を開示しない
- 他社からお問い合わせがあっても応じない
など
自社で買主を見つけ、売り主・買主両方から3%ずつ、
計6%の仲介料を独占する行為(【両手取引】)になります。
本来は、媒介契約を行った不動産業者は決められた期間内に指定流通機構(以下レインズ)へ登録し多くの不動産会社に開示が定められています。
レインズへの登録は
・一般媒介契約(レインズへの掲載義務はなしも基本的に登録)
・専任媒介契約(7日間以内に登録)
・専属専任媒介契約(5日間以内に登録)
です。
しかし、この囲い込みが、近年、さらに巧妙化していることが問題となっています。
最近増えている「囲い込み」
筆者自身も、その囲い込みがここにきてさらに増えていると感じています。
昔からあった囲い込みですが、
囲い込んだとしても売買が成立しなくては仲介手数料を取れません。
自分で買い主を見つけなくていけません。
店舗来店や電話でのお問い合わせ・新聞やチラシ・ポスティングなどでしかお客との接点がなく、
お客様探しが非常にが難しかったのは事実です。
しかし、今は媒介契約を結ぶことで、
独占的にスーモやアットホーム、Yahoo!不動産などに物件情報を掲載できます。
お問い合わせの80%以上がネットからの集客である現状から考えれば、
お客様探しは容易となり、昔に比べて囲い込みやすくなったのが現実では、
再度、悪しき習慣の復活となっている側面もあります。
不動産の囲い込みにおけるデメリット
不動産業界における「囲い込み」という言葉は、近年多くの議論を呼び起こしています。
この行為は、特定の業者が物件情報を独占し、他の業者や消費者から隠蔽するもので、市場の透明性や公平性を損なう可能性が指摘されています。
囲い込みがもたらす影響は、売り主から買主、さらには不動産業界全体や社会にまで及ぶものとなっており、その深刻さから多くの関心が寄せられています。
売主における囲い込みのデメリット:市場価格より低い価格での取引を強いられる可能性
囲い込みが行われると、物件情報が特定の不動産会社に独占され、他の競合他社との間で価格競争が生まれにくくなります。
結果として、売主は市場価格よりも低い価格で売却を迫られる可能性が高まります。
これは、情報が限られた状況下で、売主が自身の物件の適正な価値を把握しにくいためです。
売主における囲い込みのデメリット:売却活動の長期化
囲い込みを行う不動産会社は、他の仲介業者に物件情報を提供しません。
そのため、潜在的な買主への情報伝達が遅延し、売却活動が長期化する可能性が高まります。
売却期間が長引くことで、物件の維持費がかかり続けたり、市場の動向によって売却価格が変動するリスクも増大します。
売主における囲い込みのデメリット:最適な取引の機会を逸する可能性
囲い込みによって、売主はより多くの選択肢の中から最適な買主を選ぶことができなくなります。
例えば、より高額で買ってくれる買主や、より早く決済できる買主など、売主にとって有利な条件で取引できる可能性を逃してしまうかもしれません。
また、複数の不動産会社に仲介を依頼することで、より多くの買主候補に物件をアピールし、競争入札を促すことも難しくなります。
買主における囲い込みのデメリット:物件の選択肢が限定される
囲い込みが行われると、物件情報が特定の不動産会社に独占され、他の仲介業者を通じて公開されることが少なくなります。
結果として、買主は希望する物件の選択肢が限定され、理想の住まいを見つけることが難しくなります。
特に、人気のある地域や条件の良い物件は、囲い込みの対象になりやすい傾向があります。
買主は、自分が探している物件が市場に出ているかどうかすら把握できず、情報収集に苦労することになります。
特に、囲い込みをおこなう業者が増加することで、業界全体のイメージが悪化し、消費者からの信頼を失う可能性が高まります。
また、囲い込みによる不公平な取引が常態化すると、新規参入業者の障壁が高まり、業界の競争力が低下する恐れもあります。
不動産の囲い込みが行われる仕組み
不動産(家・マンション)を売却の流れをおさらい程度紹介すると、
一括不動産査定サイトを活用し、
- 1社に販売窓口をお願いする場合は、「専任媒介契約(専属専任媒介)」
- 数社に販売窓口をお願いする場合は、「一般媒介契約」
媒介契約を行います。
媒介契約を受けた不動産会社は、
不動産売却ために、レインズへの登録を決められた期間内に行います。
合わせて、
A社サイトや不動産ポータルサイト
SUMO
HOME’S
アットホーム
Yahoo!不動産
などにも掲載し広告を出します。
そこで、SUUMO等を見た購入希望者がお問い合わせをし内見・申込み・売買契約に進んでいきます。
しかし、これを悪用したものが囲い込みになります。
レインズは、不動産業者で共有しているデータベースで、個人が見ることはできません。
物件情報を、不動産会社(宅建業者)を介し、多くの購入希望者に情報を行き渡されるためのシステムです。
悪しき囲い込みのフロー
問題は、同業者が購入希望者を紹介する場合。
レインズで物件情報・売買状況を確認し、担当している顧客に物件情報を紹介します。
顧客から
- この物件の資料請求をしない!
- 内見をしたい!
という希望者がいれば、
媒介契約をしている不動産会社に、
- 「お客様が資料請求を希望しています」
- 「内見を希望しています」
とお問い合わせをします。
ここで、囲い込みが発生すると、
- 「その物件は売買が成立しています」
- 「契約段階に入って、住宅ローン審査中です」
- 「オーナーが売るのを一旦諦めました」
などで断ってしまいます。
本来であれば、売り主とってうれしい報告のように思えますが・・・。
極端な場合、
「お客様に、弊社のサイトから、お問い合わせをもらえれば、紹介が可能となります」
という返事をする場合すらあります。
両手取引が根源
不動産仲介会社は、「仲介手数料」で成り立っていますので、
他社からの紹介で売買が成立した場合、仲介手数料は半分になってしまいます。
本来、売り主の立場として売却依頼を受け媒介契約をしているのにも関わらず、買主からも仲介手数料を取ろうと企てるために妨害をするのです。
片手(3%)では飽き足らず、両手(6%)取引を意図的に行っている、
これが、問題になっている囲い込みの現実です。
囲い込み問題が表向きになったことで、
本来は、業界がクリーンになっていくのが普通ですが、
実際のところさらに手口がかなり巧妙になりつつある側面もあります。
①内見予定を売り主の都合という理由でドタキャンする
- お子様がインフルエンザで延期してくださいと言われています。
- 急な仕事で対応できないから延期してください。
②レインズのシステムを偽装する
- 紹介停止中にしたのですが、レインズはリアルタイム更新ではないのですみません
- ”書面による購入申込みあり”というステータスに勝手に変更。
③売買までのハードルを高くする・イメージを悪く見せる
- 売り主は、金額交渉には応じませんので・・・
- 銀行の事前審査を通った方のみ受け付けます
など、売り主は厄介な人物を植え付けることさえあります。
このように、囲い込みに引っかかると、
- 売れるものも売れない!
- 高く売れるものも高く売れない!
- いつ売れるか分からない!
あの手この手で独り占めできる環境を構築するのが囲い込みです。
不動産における囲い込みを回避する2つ方法
激しい囲い込みが起こる原因を考えると、その1つに専任媒介契約:仲介を一社に絞るからです。
複数の不動産会社に依頼し、多少なりとも意識させる競争関係にさせることで囲い込みを回避・軽減できます。
媒介契約は一般媒介契約に
一般媒介契約を選択することは、囲い込みを防ぐための有効な策です。
この契約形式では、売主は複数の不動産業者と契約することができます。
物件情報が市場に広く公開され、透明性が確保されます。
複数の仲介業者が競争することで、物件は適正価格で速やかに売却される可能性が高まります。
囲い込みを行わないように伝える
売主としては、契約する不動産業者に対して明確に囲い込みを行わないよう伝えることが重要です。
囲い込みが行われる主な理由は、売主が情報に疎いと見られているからです。
売主が積極的に自身の意向を表明し、囲い込みを行わないことを条件として業者との契約を結ぶことで、不透明な取引を避け、より公平な市場環境で物件を売却することが可能になります。
よって、早く・高くマンション売却を成功させるために、マンション一括査定サイトを活用しながら、一般媒介契約への変更も検討するといいでしょう。
*一般媒介契約でも囲い込みが起こることはあります。
基本的に売り主には分かりませんので・・・。
不動産売却体験談:不動産における囲い込み
私も自宅マンション売却時に、他の物件で囲い込みらしい動きを見ました。
そこで、囲い込みに関しての口コミを集めてみました。
不動産売却体験談:なかなかマンションが売れませんでした
自分が所有したマンションは、この先も住み続けるつもりでしたが、事情が変わって急きょマンション売却になりました。
インターネットで一括見積をして数社の話を聞く予定で一社目をお迎えしたときに、
「あまり安い販売価格を提示した会社はやめた方がよい」
と言われました。
二社目も簡単なお話を聞くつもりだったのに、すでに資料をいくつも作成してきたのでつい信用に結び付けてしまいました。
素人が見ても、安いとしか言いようがないくらいの設定価格で不動産会社変更も考えましたが、兎に角売りたいために依頼しました。
近所で数件のマンション売却があり、手ごたえがなく苦労しました。
売却が終わって数年たち、今思えば不動産会社の囲い込みだったのではないかと思っています。
不動産売却体験談:一向にマンションが売れない
マンションを売却したいと相談を受けて、自分が主体となって動いたけどうまいいかなかった経験があります。
特に問題のある物件ではないので、すぐに買い手は見つかるだろうと楽観視していましたが、その見込みは見事に外れることになりました。
最初のうちは
「マンション売れない」
とひたすら嘆いていましたが、これだけ待っても一向に音沙汰がないのはおかしいと感じた記憶があります。
我慢できなくなって仲介業者に問い合わせをしたところ、担当者が歯切れの悪い回答をしたので怪しさを感じ取りました。
いろいろ尋ねているうちに、
物件情報を公開せずに他社からの照会にも応じていないような気配がしたのです。
つまり 売却を依頼された物件の囲い込みをしている可能性が高いと分かりました。
不動産会社を変えれば売れるわけではありません。
ただ、営業マンのやる気が変われば流れが変わることもあります。
多くの不動産会社の営業マンと膝を突き合わせるのもいいと思います。
不動産における囲い込み:よくある質問・Q&A
不動産における囲い込みについて疑問・悩み・不安においてよくある質問・Q&Aを公式サイトから抜粋し紹介します。
よくある質問詳細はコチラ不動産における囲い込み;記事まとめ
囲い込みは、不動産業界における深刻な問題として認識されています。
この行為は、業者の短期的な利益追求の結果として行われることが多いが、長期的には業界全体の信頼性を低下させるリスクがあります。
情報の公開や共有、消費者の啓発、業界の自浄努力など、囲い込みを防ぐための取り組みが進められています。
今後は、これらの取り組みをさらに強化し、囲い込みを根絶するための新しいビジネスモデルや法的対策が模索されることが期待されます。
元メガバンク融資課出身、バブル時代に不動産コンサルティングに従事し、2000年、会社設立後、底地ビジネス・事務所の立ち退き裁判等も経験した宅建士と共に立ち上げ、現在、不動産にまつわるサービスの紹介、口コミ・筆者の感想を加え紹介しています。