転勤という言葉は、多くのサラリーマンやその家族にとって、喜びとともにさまざまな悩みをもたらすものです。
新しい環境での仕事や生活のスタートは刺激的である一方、特に持ち家を所有している場合、その取り扱いに頭を悩ませることが少なくありません。
転勤で単身赴任予定の夫
私も一緒に行くと言ったら夫は義母を1人ここに残せるだろうか?
逆に皆で引越す事が出来る?
夫は地元自宅は残したい
夫よ解る?何の心配も無く転勤出来るのは何故か?子供も独立家を出た
私の母は遠方で1人暮し
私は義母とここで2人暮しに
夫よ、私の気持ちが解るか?— リリカ (@yuri_yori150705) November 29, 2024
- 単身赴任を選択するか?
- 持ち家を売却するか?
- 賃貸として貸し出すか?
- あるいはそのまま保有するか?
それぞれの選択にはメリットとデメリットが存在します。
売却すればその資金を新たな生活のために活用できますが、売却タイミングや市場状況に左右されることもあります。
一方、賃貸運用では安定した収益を見込める可能性がある一方で、管理や維持費、空室リスクなどの不安も抱えることになります。
どちらの選択肢が自分にとって最適なのか、慎重に考える必要があります。
この記事では、
- 転勤時の持ち家の選択肢
- 転勤時の不動産売却のメリット・デメリット
- 転勤時の不動産賃貸のメリット・デメリット
- そのまま保有する時のポイント
また、転勤時の持ち家の税制面での注意点まで、
売却や賃貸といった選択をする際の税金のポイントを詳しく解説します。
転勤時に持ち家をどうする?3つの選択肢
転勤が決まったとき、持ち家がある場合は、今後の生活や資産に関わる重大な決断が求められます。
慣れ親しんだ我が家をどうするか、という問題には、単なる引っ越しとは異なる複雑な判断が必要です。
- 売るべきか
- 貸すべきか
- それともそのままにしておくべきか
どの選択肢も一長一短あり、あなたの状況によって最適な答えは異なります。
ここでは、転勤時の持ち家に関する主要な3つの選択肢について、それぞれのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
1.売却する場合のメリット・デメリット
転勤を機に持ち家を売却するという選択は、最もシンプルで分かりやすい解決策です。
メリット
- 資産の現金化と整理
売却することで住宅ローンを完済し、残ったお金を転居先の住居の頭金にするなど、次の生活の資金に充てることができます。 - 管理の負担から解放
持ち家を売ることで、固定資産税や管理費、修繕積立金といった維持費の負担がなくなります。
また、遠方からの管理や近隣との付き合いといった精神的な負担からも解放されます。
デメリット
- 売却損のリスク
不動産市場の状況によっては、希望する価格で売れず、住宅ローンを完済できない「オーバーローン」になるリスクがあります。 - 買い戻し不可
一度売却してしまうと、将来的に元の場所に戻る予定があっても、同じ家に戻ることはできません。
2.賃貸に出す場合のメリット・デメリット
転勤後も持ち家を保有し続けたい場合は、賃貸に出すという選択肢があります。
メリット
- 家賃収入の確保
毎月入ってくる家賃収入で住宅ローンの返済が可能になります。うまく運用すれば、プラスの収益を得られる可能性もあります。 - 将来的に自宅に戻れる
転勤期間が終了した際に、再び自宅として住むことができます。
デメリット
- 空室リスクと管理の手間
入居者が見つからない「空室期間」は家賃収入が途絶え、ローンの返済負担が重くなります。また、入居者とのトラブルや、設備故障の対応など、遠方にいながらにして管理の手間が発生します。
転勤族になり、せっかく買った自宅を賃貸に出した。しかしそのおかげで住宅ローンを倍速で返済。40代には完済。その子も自分の身を助ける財産とのなった話。人間万事塞翁が馬
ローン返済に関しては理想的だな。自分の場合は、株と不動産投資で、住宅ローンの額を稼ぎたい。そうすれば自由の翼が生える— てんやもん (@EhNa2h) November 16, 2024
3.空き家にして保有し続ける場合のリスク
売却も賃貸も選ばず、空き家として保有し続けるという選択肢もあります。
リスク
- 経済的負担の継続
住んでいなくても、住宅ローンや固定資産税、管理費、修繕積立金などの支払いは続きます。
住宅ローン控除が利用できなくなるため、大きな負担になる可能性があります。 - 建物の老朽化と防犯面
誰も住んでいない家は、換気が不十分でカビが生えたり、水道管が錆びたりと、急速に老朽化が進みます。
また、定期的な見回りがないため、不法侵入や放火などの犯罪リスクも高まります。 - 「空き家税」の可能性
今後、管理が不十分な空き家に対して「空き家税」が課される可能性もあります。
これらの選択肢を十分に比較検討し、ご自身の状況に最も合った方法を見つけることが大切です。
住宅ローンが残っている場合の注意点
持ち家の売却や賃貸を考える上で、多くの方が最も気にするのが住宅ローンの存在ではないでしょうか。
- 「まだローンがたくさん残っているから、売るなんて無理だろう…」
- 「もし賃貸に出して、空室になったら返済はどうしよう…」
といった不安は尽きません。
しかし、ローンが残っていても、選択肢が閉ざされるわけではありません。
大切なのは、残債を正しく把握し、それぞれの選択肢に伴うリスクと手続きを理解しておくことです。
売却時の残債シミュレーションと精算方法
持ち家を売却する場合、原則として売却代金で住宅ローンの残債を一括返済しなければなりません。
そのため、まずは「売却価格がローン残債を上回るか」をシミュレーションすることが不可欠です。
- アンダーローン(売却価格 > ローン残債)
売却価格でローンを完済でき、手元に現金が残る状態です。
諸費用(仲介手数料など)を差し引いてもプラスになるかを確認しましょう。 - オーバーローン(売却価格 < ローン残債)
売却価格だけではローンを完済できない状態です。
この場合、不足分を自己資金(預貯金など)で補填する必要があります。自己資金で補えない場合は、原則として売却ができません。
まずは、金融機関から送付されている返済予定表で現在のローン残債を確認し、不動産会社に査定を依頼して、おおよその売却価格を把握することから始めましょう。
賃貸に出す際のローン返済リスク
家賃収入でローンを返済できる賃貸は魅力的に見えますが、注意が必要です。
そもそも住宅ローンは「契約者本人が居住すること」を条件に低金利で融資されているため、賃貸に出す場合は必ず事前に金融機関へ相談し、許可を得なければなりません。
無断で賃貸に出すと契約違反となり、一括返済を求められるリスクがあります。
金融機関によっては、より金利の高い事業用ローンへの切り替えが必要になる場合もあります。
また、常に満室とは限らず、空室期間中のローン返済は自己資金で行う必要があります。
家賃収入を完全に当てにするのではなく、数ヶ月分の返済額に相当する自己資金を用意しておくことが、安定した賃貸経営の鍵となります。
住宅ローン控除や税金の影響
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末時点でのローン残高に応じて所得税などが還付される制度ですが、これも「本人が居住していること」が適用条件です。
- 単身赴任の場合
家族がその家に住み続けるのであれば、引き続き住宅ローン控除を受けられます。 - 家族全員で転居する場合
その家から誰もいなくなるため、転居した年以降は住宅ローン控除の適用対象外となります。
ただし、転勤から戻ってきて再びその家に住むことになれば、一定の要件を満たすことで、残りの控除期間について再適用を受けられる可能性があります。
ご自身の状況がどのケースに当てはまるか、事前に税務署や税理士に確認しておくと良いでしょう。
家族構成やライフスタイル別の最適解
転勤時の持ち家に対する最適な選択は、「誰が」「いつ」「どこに」移動するのか、という個々の状況によって大きく異なります。
家族構成や将来のライフプランを考慮せずに決断してしまうと、後になって「こんなはずじゃなかった…」と後悔することにもなりかねません。
単身赴任で家族は持ち家に残るケース
このケースは、最もシンプルで明確な選択肢となります。
- 最適な選択
そのまま居住し続ける
この場合、住宅ローン控除が継続して適用され、家族も慣れ親しんだ環境で生活を続けられます。
転勤先での住居費はかかりますが、家を売却したり賃貸に出したりする手間やリスクは発生しません。家族が安心して暮らせることが最大のメリットです。 - 注意点
転勤先での生活費や家賃が加わるため、一時的に家計の負担が増加する可能性があります。
赴任期間中の生活費を事前にシミュレーションし、無理のない範囲で生活を送ることが大切です。
家族全員で引っ越すケース
家族全員で転居する場合は、持ち家が空き家になるため、慎重な検討が必要です。
- 最適な選択
売却または賃貸
どちらを選ぶかは、将来の帰任可能性が最大の判断基準となります。- 帰任の可能性が低い、または転居先で永住を考えている場合
売却を選択するのが最も合理的です。住宅ローンから解放され、資産を現金化して次の住居の購入資金に充てられます。 - 数年後に戻ってくる可能性がある場合
賃貸を選択するのが良いでしょう。家賃収入でローンの返済をしながら、将来的に自分の家に戻れるという安心感があります。
- 帰任の可能性が低い、または転居先で永住を考えている場合
- 注意点
売却の場合、ローン残債が売却価格を上回るオーバーローンにならないか確認が必要です。
賃貸の場合、空室リスクや管理の手間を考慮し、信頼できる不動産会社を見つけることが不可欠です。
将来の帰任を見据えた選択
「転勤期間は決まっているけれど、将来的にまたこの家に戻ってきたい」と考えている場合は、目先の損得だけでなく、未来のライフプランを優先した選択が重要になります。
- 最適な選択
賃貸に出す
将来的に自宅に戻りたいという希望があるならば、賃貸が最も現実的な選択肢です。
ただし、賃貸契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。- 普通借家契約
入居者が望めば更新が可能なため、あなたが戻りたいと思ってもすぐに明け渡してもらえない可能性があります。 - 定期借家契約
契約期間が満了すれば確実に退去してもらえるため、帰任の時期が決まっている場合はこちらを選びましょう。
- 普通借家契約
この場合、家賃収入が住宅ローンの返済額を下回っても、将来の帰任を優先し、その差額を自己資金で補うという覚悟も必要になります。
転勤時の持ち家を活かすための判断基準
転勤で持ち家をどうするか、という決断は、あなたの資産や将来の暮らしに大きく影響します。
感情的な側面だけでなく、客観的なデータや専門家の意見を取り入れることが、後悔しない選択をする上で非常に重要です。
資産価値と地域の不動産相場をチェック
まず最初に行うべきは、所有する家の現在の市場価値を把握することです。
住宅ローンの残債額だけでなく、地域の不動産相場がどうなっているかを調べる必要があります。
相場を把握することで、売却した場合にどれくらいの金額で売れそうか、賃貸に出した場合にどれくらいの家賃収入が見込めるかが明確になります。
特に駅からの距離、周辺の開発状況、学区の人気度といった地域の需要が、あなたの家の資産価値を大きく左右します。
複数の不動産会社に査定を依頼し、その査定額や根拠を比較検討することで、より正確な価値を知ることができます。
転勤期間の長さで選択肢は変わる
転勤期間がどれくらいになるかによって、最適な選択肢は大きく変わります。
- 転勤期間が1〜3年程度の短期の場合
賃貸に出すか、空き家として保有し続けるのが現実的な選択肢です。
特に、将来的に元の家に必ず戻りたいと考えている場合は、一時的な家賃収入を目的とした定期借家契約を利用するのが良いでしょう。 - 転勤期間が5年以上の長期の場合
売却を真剣に検討すべき時期です。長期間家を空けておくと、家の老朽化や防犯面のリスクが高まります。
また、再び戻る頃には、家族構成が変わったり、生活スタイルが変わったりしている可能性も高く、その家に戻る必要がなくなるかもしれません。
専門家に相談して最適解を見つける
持ち家の処分方法を一人で悩む必要はありません。
不動産に関する専門家、特に信頼できる不動産会社に相談することが、最適な答えを見つけるための最も確実な方法です。
不動産会社の担当者は、市場の動向や地域の需要を熟知しており、あなたの家の売却価格や賃貸に出した場合の家賃相場を正確に査定してくれます。
また、売却と賃貸の両方を検討している場合は、両方のシミュレーションを依頼し、それぞれのメリット・デメリットを比較してもらうのが良いでしょう。
専門家の客観的な意見を取り入れることで、感情的な判断に流されず、冷静かつ合理的な決断を下せるでしょう。
まとめ:転勤時の持ち家は「資産」として最適解を選ぶ
転勤という予期せぬ出来事は、持ち家をどうするかという大きな課題を突きつけます。
しかし、この瞬間を単なるトラブルと捉えるのではなく、あなたの持ち家を「資産」としてどのように活用するかを考える絶好の機会だと捉えましょう。
売却、賃貸、空き家保有という3つの選択肢は、それぞれ異なる道ですが、どれが最適かはあなたの状況次第です。
後悔しないためには、感情に流されず、客観的な情報に基づいて冷静に判断することが何よりも重要です。
まずは、あなたの家の正確な価値を把握するために複数の不動産会社に査定を依頼し、住宅ローンの残債額も確認しましょう。
その上で、転勤期間、将来のライフプラン、そして家族構成といった要素を総合的に考慮することで、あなただけの「最適解」が見えてきます。
一人で悩まず、専門家の力を借りることも賢明な選択です。
不動産のプロに相談することで、専門的な知識や市場の最新動向を踏まえたアドバイスを得られます。




元メガバンク融資課出身、バブル時代に不動産コンサルティングに従事し、2000年、会社設立後、底地ビジネス・事務所の立ち退き裁判等も経験した宅建士と共に立ち上げ、現在、不動産にまつわるサービスの紹介、口コミ・筆者の感想を加え紹介しています。