関係人口
近年、少子高齢化や人口減少が深刻化する中、地域活性化や地方移住が注目されています。
多くの自治体が、定住人口を増やし、地域経済を活性化しようとさまざまな取り組みを行っています。
しかし、必ずしも全員が移住できるわけではありません。
そこで注目されているのが、「関係人口」という概念です。
今回は、地域と人がつながる新しいカタチとして注目される関係人口について、詳しく解説していきます。
関係人口とは何か?
「関係人口」とは、地域に居住していなくても、経済的・文化的なつながりを持つ人々のことを指します。
つまり、地域の一員として、その地域に関わり、貢献している人々を指す言葉です。
従来の「定住人口」は、実際にその地域に住んでいる人、「交流人口」は、旅行などで一時的に地域を訪れる人のことを指していました。
しかし、関係人口は、これらの概念を包含しつつ、より広義で、地域との関わり方を捉える概念です。
関係人口が注目される背景
関係人口が注目される背景には、以下の社会的な変化があります。
このような社会の変化の中で、地域は定住人口の減少に歯止めをかけるだけでなく、地域の外にいる人々とのつながりを深めることで、新たな価値を創造し、活性化を図ろうとしています。
関係人口の成り立ち
関係人口という概念は、2000年代前半に雑誌「ソトコト」編集長の指出一正氏が提唱したと言われています。
地域外の人々がその地域に対して持つ関心や活動を通じて、地域の活性化に貢献できる可能性に着目し、
指出氏の提案後、この概念は学術界でも注目され、特に明治大学農学部の小田切徳美教授が研究を深め、関係人口の理論的な基盤と具体的な推進策を提案しました。
小田切教授の研究により、関係人口が単なる概念から具体的な地方創生の手段へと進化しました。
さらに、この理論は政府にも受け入れられ、「関係人口創出・拡大事業」として総務省により国策として推進されることになります。
この事業は、地域に新しい関係人口を創出し、既存の関係人口をより深く地域に結びつけることを目指しています。
関係人口が地域に与える影響
関係人口は地域経済に多方面からの寄与を行います。
関係人口のメリット:消費の活性化
地域を訪れた関係人口は、地元の特産品を購入したり、飲食店を利用したりすることで、地域経済の活性化に貢献します。
オンラインストアでの購入やふるさと納税など、物理的に訪れなくても地域経済に貢献できる手段が増えています。
関係人口のメリット:新たなビジネスの創出
関係人口の増加は、新たなビジネスチャンスを生み出します。
例えば、地域の魅力を発信するウェブサイトやSNSの運営、地域特産品を使った商品開発など、関係人口をターゲットにしたビジネスが生まれやすくなります。
関係人口のメリット:人材の流動化
関係人口の中には、地域で起業したり、リモートワークで地域に移住したりする人もいます。
これらの活動は、地域に新たな人材やスキルをもたらし、地域経済の多様化を促進します。
関係人口のメリット:投資の促進
関係人口の中には、地域への投資をおこなう人もいます。
古民家を改修して地域活性化に貢献したり、地域企業への出資を行ったりするなど、地域経済の成長を後押しします。
関係人口:各都道府県・自治体の取り組み
少子高齢化や人口減少が進む中、地域活性化の新たなキーワードとして注目されているのが「関係人口」です。
地域に居住していなくても、経済的・文化的なつながりを持つ人々を指し、ふるさと納税やボランティア活動など、さまざまな形で地域に関わることができます。
各都道府県・自治体では、関係人口を増やし、地域の魅力を発信するため、ユニークな取り組みが展開されています。
関係人口、自治体の取り組み:あすかオーナー制度
奈良県明日香村
明日香村では、農業の担い手の高齢化や減少が進む中、歴史的景観を支え続ける「農」を守るため、「あすかオーナー制度」に取り組んでいます。
会費を支払うことで、農村にある棚田・酒・果樹等のオーナーなることができます。
オーナーは、田植えや稲刈り、収穫といった農作業などを体験できるほか、地元農家の栽培指導を受けることもできます。
関係人口、自治体の取り組み:酒米田んぼのオーナー制度
茨城県笠間市
茨城県笠間市上郷地区では、三方を山に囲まれ、湧き出る清水が小川となり、里山の田んぼを潤しています。
この豊かな自然環境を次世代に残すため、空中散布を止め、農薬の使用を地域全体で減らし環境に優しい農業を実践しており、その結果、ホタルやタガメ、野生の日本みつばちなどが生息しています。
酒米田んぼオーナー制度では、この環境に優しい米づくりを応援してくださるオーナーを募集します。
お米の品種は「日本晴」を栽培し、できたお米でお酒をつくります。
お酒の醸造は140年以上続く地元笠間の蔵元、磯蔵酒造にて世界のどこにもないオリジナルの純米酒を仕込みます。
オーナーは年4回の農作業に携わることでさらに思いも深まります。米づくりは上郷地域うまい米づくり研究会がバックアップします。
関係人口、自治体の取り組み:わかやましごと・くらし体験
和歌山県
「起業・就農コース」(最大2泊3日)と「就労コース」(最大5泊6日)の2コースあり、製炭事業者からIT事業者まで、さまざまな業種を体験することができ、現在100事業所を超える登録があります。
また、近年起業が増えているゲストハウスに滞在し、地域の情報もあわせて収集することができます。
関係人口:定住人口と交流人口の違い
近年、地域活性化のキーワードとして頻繁に耳にする「関係人口」。
定住人口や交流人口といった言葉と似ていますが、それぞれが指す範囲や意味は異なります。
定住人口とは?
定住人口は、一定の地域に住む人、住民票を置き、その地域を生活の拠点としている人の数を指します。
地域の経済と文化に大きな影響を与え、定住人口が増加すると、地域の消費者数が増加し、地域の経済が活性化します。
交流人口とは?
交流人口は、一定の地域に訪れる人々(旅行や出張などで一時的に地域を訪れる人)の数を指します。
これらの交流人口が地域に持つ影響は大きく、地域の経済や文化に新鮮な刺激を与え、地域外からの視点や資源をもたらすことで、地域の活性化に寄与します。
概念 | 説明 | 特徴 |
---|---|---|
定住人口 | ある地域に住民票を置き、その地域を生活の拠点としている人 | 地域社会の基盤を担う。地域の経済活動や自治活動に深く関わる。 |
交流人口 | 旅行や出張などで一時的に地域を訪れる人 | 地域の観光業やサービス業に貢献する。地域との関わりは一時的。 |
関係人口 | 地域に居住していなくても、経済的・文化的なつながりを持つ人 | 定住人口と交流人口の両方の要素を持つ。地域との関わり方は多様で、柔軟。 |
よくある質問
関係人口の理想的な発展は、地域とのより深い結びつきと相互の利益をもたらす方向に進むことです。
関係人口が地域の文化や活動に積極的に参加し、地域住民との間で継続的な交流を持つことが望ましいと言えます。
また、地域のニーズに合わせたプロジェクトやイベントに関係人口が参加することで、地域の持続可能な発展を支援することができます。
これにより、関係人口と地域住民が互いに支え合い、ともに成長する関係を築くことが理想的です。
関係人口:記事まとめ
この記事を通じて、関係人口の概念とその地域に与える影響について考察しました。
関係人口は、地域に住まない人々がその地域と持つ結びつきを示し、地方創生や地域活性化の重要な鍵となっています。
地域外からの視点や資源を取り入れることで、地域は新たな活力を得ることができ、文化的な交流や経済的な発展を促進します。
今後も関係人口の活動を支援し、育てることが地域の持続可能な成長に繋がるでしょう。
日本は少子高齢化が進み、地方を中心に人口減少が深刻な問題となっています。