近年は物価上昇や固定資産税の増加、管理コストの上昇を背景に、家賃改定を行う物件が増えています。
当メディアでは先月、契約更新時の家賃値上げに関するアンケートを実施しました。
今回は、前回調査をさらに細分化した追加アンケートを実施。
値上げの有無、増額幅、理由、入居者の対応、地域別の違いなど、“気になるポイント”をより深掘りして可視化しました。
家賃値上げの最新動向と入居者のリアルな声を、データとともにわかりやすく解説します。
⇒フジテレビ系『Mr.サンデー』にて、「不動産の口コミ評判堂」が実施したアンケート結果が引用されました!
⇒【住宅新報】にて、「不動産の口コミ評判堂」が実施した不動産の賃貸契約更新アンケート調査が紹介されました
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【調査レポート】契約更新時の家賃値上げに関する実態調査(全体編)
本章では、今回のアンケート結果をもとに、全国レベルで家賃値上げがどの程度発生しているのかを詳しく分析します。
- 「値上げ通告は何%か?」
- 「増額はいくらが多いのか?」
- 「どのように対応する入居者が多いのか?」
といった、まず最初に知りたい“全体像”をまとめています。
前回は、日本全国を対象としていましたが、
今回は、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県、大阪府・京都府・兵庫県・福岡県に限定し、現役入居者を対象に実施し、合計232件の回答を得ました。
地域別の詳細(東京編・関西編など)に入る前に、まずは全国の動向を確認し、現在の家賃改定の潮流を把握していきましょう。
1.年齢層の分布
- 20代:63人(30.6%)
- 30代:86人(41.7%)
- 40代:47人(22.8%)
- 50代:19人(9.2%)
- 60代以上:7人(3.4%)
※ボリュームゾーンは「30代」で約4割を占め、次いで20代・40代が続きました。
2.回答者の居住地域
■ 都道府県別 件数(多い順)
| 都道府県 | 件数 |
|---|---|
| 東京都 | 101件 |
| 神奈川県 | 34件 |
| 埼玉県 | 22件 |
| 大阪府 | 22件 |
| 福岡県 | 20件 |
| 千葉県 | 16件 |
| 兵庫県 | 12件 |
| 愛知県 | 12件 |
| 京都府 | 8件 |
| その他 | – |
3.契約更新時に「家賃の値上げ」を通告されましたか?
今回の調査の核心である「値上げ通告の有無」を確認したところ、以下の結果となりました。
- 値上げ通告なし:169件(73%)
- 値上げ通告あり:63件(27%)
全国規模で見ると「4人に1人」が値上げ通告を受けており、家賃上昇の波が確実に広がっていることがわかります。
4. 賃料値上げ通告後の入居者の対応
値上げを通告された63名は、その後どのような行動を取ったのでしょうか。
値上げ通告を受けた入居者63名のうち、最も多かったのは「提示額のまま更新した」34名(約54%)でした。
生活環境を変える負担や、近隣相場を見ても妥当と判断したケースが多いと考えられます。
次に多かったのは、「交渉して据え置きになった」16名(約25%)です。
交渉によって現状維持を勝ち取っている人が一定数おり、必ずしも値上げが“絶対”ではない実態が見えます。
また、「値上げ幅を下げて更新」7名(約11%)と、一定の譲歩によって折り合いがついたケースも確認できます。
一方、「更新せず退去」6名(約10%)は少数派。
やはり引っ越しコストや環境の変化を避けたい入居者が多いため、退去という選択肢は最後の手段になりやすいことがうかがえます。
全体として、値上げ通告後でも約9割が“更新”の方向で決着しており、交渉の余地が十分にあることが明確に示される結果となりました。
| 対応内容 | 件数 |
|---|---|
| ① 提示額を了承して更新 | 34件 |
| ② 交渉して据え置き | 16件 |
| ③ 値上げ幅を下げて更新 | 7件 |
| ④ 更新せず退去 | 6件 |
5.値上げ理由で最も多いのは「物価上昇・管理費増加」(複数回答)
入居者へ提示された値上げ理由として最も多かったのは、「物価上昇・管理費増加」47件でした。
ここ数年の電気代高騰、資材価格の上昇、人件費の増加などが背景にあり、多くの大家・管理会社が“維持管理コストの増加”を理由に挙げています。
次いで、「周辺家賃相場が上がっている」20件が続き、地域の相場との均衡を取るために値上げを行うケースも一定数見られました。
また、「建物の維持・修繕費」19件は、老朽化が進む物件や計画修繕の前後で値上げが行われる傾向を示しています。
一方で、「特に説明なし」3件という回答もあり、理由を伝えずに値上げのみ通知されるケースもわずかに存在します。
全体を通じて、物価高・人件費高騰の影響が家賃にも波及している実態が明確に浮き彫りになりました。
- 物価上昇・管理費増加:47件
- 周辺家賃相場の上昇:20件
- 建物維持・修繕費:19件
- 特に説明なし:3件
6.値上げ額の分布
提示された値上げ幅は次の通りです。
- +2,000〜5,000円:27件(最多)
- +5,000〜10,000円:14件
- +10,000〜20,000円:6件
- +20,000円以上:3件
多くのケースで「数千円の値上げ」が中心となっています。
一方で、都心部を中心に1〜2万円以上の値上げ事例も確認されました。
7.次回更新時の値上げへのスタンス|半数以上が「交渉・慎重姿勢」(意向調査)
次回の契約更新時に値上げが提示された場合の意向を尋ねたところ、最も多かったのは「理由次第では交渉する」86件でした。
全体の中で最も高い割合を占めており、値上げが一般化してきた今、入居者の間では「交渉する」という選択肢がより現実的なものになっていると考えられます。
次に多かったのは「納得できる範囲なら受け入れる」70件で、一定の合理性や妥当性を感じれば更新を選ぶ人も多いことがわかります。
一方、「無条件では受け入れない」54件という慎重な姿勢も見られ、値上げ=即受け入れではないという意識が根強いことがうかがえます。
また、「引っ越しを検討する」67件は3割以上を占めており、値上げ幅が大きい場合や理由が不明確な場合には、退去を選択肢に入れる入居者が一定数いることも明確です。
全体として、入居者の多くが“理由の説明と妥当性を求める姿勢”にあり、納得感のない値上げには応じにくいことが読み取れる結果となりました。
| 選択肢 | 件数 |
|---|---|
| ① 納得できる範囲なら受け入れる | 70件 |
| ② 理由次第では交渉する | 86件 |
| ③ 無条件では受け入れない | 54件 |
| ④ 引っ越しを検討する | 67件 |
賃貸借契約における家賃(賃料)は、貸主が自由に変更できるものではありません。
日本の借地借家法第32条では、「経済事情の変動」「近隣の家賃相場」「固定資産税などの増減」といった要素から見て賃料が不相当と判断される場合に限り、貸主・借主のどちらからでも増額または減額請求ができると定められています。
ただ、
- 「物価が上がっているから」
- 「周辺が高くなっているから」
といった理由だけでは法的には不十分であり、根拠となる資料(相場比較・経済データ・課税証明など)がなければ、借主側は“拒否”または“交渉”が可能です。
と再度伝えるだけで問題ありません。
【東京限定】家賃更新時の値上げ実態調査レポート(104件)
本章では、東京都在住の回答者104件に絞り、家賃更新時の値上げ通告と、その後の行動、実際の増額幅について詳細に分析しました。
全国的に家賃上昇が話題となる中、特に人口・物件密度の高い東京都ではどのような傾向が見られるのか。
実際の値上げ金額、エリア別の具体事例まで含めて解説していきます。
1.東京における「値上げ通告」の発生率と行動
東京都内の回答104件のうち、実に75%(78件)が「値上げ通告なし」という結果でした。
一方で、約25%(26件)は何らかの値上げ提示を受けており、4人に1人が家賃増額の対象となっています。
東京都:値上げ通告後の行動は「承諾」が最多だが、交渉も一定数
東京都で値上げ通告を受けた入居者の行動を見てみると、最も多かったのは「提示額をそのまま承諾して更新」15件(57.7%)でした。
都内は引っ越しコストが高く、住み替えのハードルも大きいため、結果的に受け入れを選ぶ人が一定数いると考えられます。
一方で、「交渉して据え置き」5件(19.2%)、「値上げ幅を下げて更新」5件(19.2%)といった、交渉によって条件が改善されたケースも複数見られ、都内では入居者の交渉行動が比較的活発である点が特徴です。
また、「更新せず退去」1件(3.8%)という選択肢もわずかに確認され、値上げ幅や居住環境によっては転居を検討する動きも一定数存在しています。
全体として、値上げ通告を受けた都内入居者の多くは、受け入れるか、交渉して条件を調整する形で対応していることが分かります。
| 行動 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 提示額を了承して更新 | 15件 | 57.7% |
| 交渉して据え置き | 5件 | 19.2% |
| 値上げ幅を下げて更新 | 5件 | 19.2% |
| 更新せず退去 | 1件 | 3.8% |
2.東京における「家賃増額額の統計」
東京都で値上げが発生した物件について、実際の増額金額を集計した結果は以下の通りです。
| 指標 | 金額 |
|---|---|
| 平均値(mean) | +6,762円 |
| 中央値(median) | +5,000円 |
| 最小値 | +2,000円 |
| 最大値 | +20,000円 |
| 標準偏差 | 5,069円 |
最も多い帯域は+3,000〜+5,000円で、
全体の値上げ幅は比較的「緩やかな上昇」が中心です。
一方、高額帯では+10,000〜20,000円に達する事例もあり、
都心部や人気エリアでは明確な上昇圧力が出ていることが分かります。
【東京の実例】家賃値上げの具体事例
次に、今回のアンケートで回答された「東京都内の家賃増額事例」を、
旧家賃・新家賃・間取りと合わせて一覧で紹介します。
都内のどのエリアで、どの程度の値上げが発生しているか、実態が分かりやすくなっています。
| エリア | 町名 | 間取り | 旧家賃 | 新家賃 | 値上げ額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 板橋区 | **町 | 2K | 80,000円 | 83,000円 | +3,000円 |
| 世田谷区 | ** | 1K | 85,000円 | 90,000円 | +5,000円 |
| 千代田区 | **町 | 2LDK | 250,000円 | 270,000円 | +20,000円 |
| 港区 | ** | 2LDK | 320,000円 | 340,000円 | +20,000円 |
| 三鷹市 | ** | 1R | 60,000円 | 70,000円 | +10,000円 |
| 江戸川区 | ** | 2LDK | 140,000円 | 145,000円 | +5,000円 |
| 江戸川区 | ** | 1K | 53,000円 | 56,000円 | +3,000円 |
| 小平市 | **町 | 1R | 50,000円 | 53,000円 | +3,000円 |
| 品川区 | ** | 1K | 80,000円 | 85,000円 | +5,000円 |
| 渋谷区 | ** | 1LDK | 110,000円 | 115,000円 | +5,000円 |
| 渋谷区 | ** | 1K | 98,000円 | 100,000円 | +2,000円 |
| 新宿区 | ** | 1K | 87,000円 | 97,000円 | +10,000円 |
| 墨田区 | ** | 1LDK | 105,000円 | 110,000円 | +5,000円 |
| 立川市 | **町 | 1LDK | 85,000円 | 88,000円 | +3,000円 |
| 日野市 | ** | 2DK | 105,000円 | 110,000円 | +5,000円 |
| 府中市 | **町 | 2DK | 120,000円 | 125,000円 | +5,000円 |
| 武蔵野市 | **町 | 2DK | 124,000円 | 134,000円 | +10,000円 |
| 目黒区 | ** | 2DK | —(+2,000円) | — | +2,000円 |
| 北区 | ** | 3LDK | 110,000円 | 115,000円 | +5,000円 |
| 江東区 | ** | 2LDK | 195,000円 | 205,000円 | +10,000円 |
| 世田谷区 | ** | 2LDK | 115,000円 | 118,000円 | +3,000円 |
| 練馬区 | ** | 1R | 60,000円 | 65,000円 | +5,000円 |
町名を含めたアンケート結果はnoteで紹介する予定です
契約更新前の「情報収集」や「準備」に関するリアルな声
今回のアンケートでは、契約更新や家賃値上げの通告を受ける前に、家賃や相場についてどのような情報収集・準備をしていたかも詳しく伺いました。
結果を見ると、まったく何も調べていなかった人から、周辺相場・法律・交渉方法までかなり綿密にリサーチしていた人まで、そのスタンスは実にさまざまです。
- 「値上げされるとは思っていなかった」
- 「断れると知らず、言われるままに更新してしまった」
という声がある一方で、賃貸サイトで近隣物件の家賃をチェックしたり、SNSやYouTubeの体験談、消費生活センター・不動産会社への相談を通じて、事前に備えていた人も一定数いました。
以下では、回答者の具体的なコメントをピックアップしながら、契約更新前にどのような考え方・準備の仕方があったのかを紹介します。
記事まとめ|家賃値上げは「突然の出来事」ではなく、知識と準備で対処できる時代へ
今回のアンケートから見えてきたのは、家賃値上げの通告は決して珍しいものではなく、約4人に1人が実際に値上げを打診されているという現実でした。
特に東京都を中心に都市部での値上げ傾向が強く、物価上昇や管理費・修繕費の増加が背景にあることが多いことが分かりました。
一方で、「受け入れるしかない」「断れることを知らなかった」という声も依然として多く、家賃交渉に関する知識が十分に浸透していない実態も浮き彫りになりました。
しかし、周辺相場を調べたり、ネット上の体験談を参考にしたり、専門機関に相談してから交渉に臨むことで、据え置きや値上げ幅の縮小に成功したケースも少なくありません。
今回寄せられた多くのコメントからも、事前に最低限の情報収集をしておくことで、不安や不満を感じる場面でも冷静に判断できるという意見が多数見られました。
家賃値上げは避けられない時代に入りつつありますが、だからこそ「相場を知る」「断れるケースを知る」「理由を確認する」「必要なら専門機関に相談する」など、生活者として備えておける選択肢は確実に増えています。
不動産の口コミ評判堂では、今後も実際の声をもとに、住まいに関する課題や不安を解消するための情報を発信していきます。
今回のアンケートにご協力いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。







言われたら従うものだと思い込んでいました。