地面師とは?不動産取引詐欺を深掘り!地面師が狙う不動産の特徴とは
- 「不動産を買おうとしているんだけど、最近よく聞く『地面師』って正直こわい…」
- 「積水ハウスやアパホテルみたいな大手も騙されるのに、一般人が見抜くなんて無理じゃない?」
不動産の売買は、人生でもトップクラスの「大勝負」です。
本来であれば、買主・売主・仲介会社・司法書士などがきちんと役割を果たし、契約や登記のプロセスを踏みながら安全に進んでいきます。
ところが、この“複雑で専門的な仕組み”そのものを逆手に取り、
巧妙な演技と精巧な偽造書類で第三者を騙し、巨額の資金を奪い取るのが「地面師詐欺」です。
近年は、積水ハウスやアパホテルなど名だたる企業が被害にあった事件も連日のように報道され、地面師はもはや「一部の裏社会の話」ではなく、深刻な社会問題として注目されています。
「そもそも地面師とは何者なのか?」
「どんな不動産が狙われ、どんな手口で騙されるのか?」
この記事では、そんな疑問に徹底的に向き合い、
● 実際に起きた有名な地面師事件の概要と衝撃的な手口
● 地面師が好んで狙う“危険な不動産”の共通点
● 一般の不動産オーナー・購入検討者が取るべき具体的な防衛策
を、わかりやすく深堀りして解説します。
最近は、地面師を題材にしたNetflixドラマも話題になり、エンタメとして注目される一方で、現実の事件とは違う部分も少なくありません。
ドラマ『地面師たち』にも触れながら、フィクションと現実の“決定的な違い”も整理していきます。
この1本を読み終えるころには、
「なんとなく不安」から「具体的にここをチェックすればいい」へ。
不動産詐欺から自分の資産を守るための“実戦的な視点”を手に入れていただけるはずです。
地面師詐欺とはどのような事件か?
不動産取引は、契約書・登記・各種証明書など、法的な手続きによって安全性が担保されています。
しかし、その「書類」と「手続き」に依存している構造そのものが、地面師にとっては絶好の“抜け道”になります。
地面師とは、他人名義の土地や建物を、あたかも自分の所有物であるかのように装い、
大手企業や不動産会社を相手に、巨額の売買代金や手付金をだまし取る詐欺グループです。
表向きは、通常の不動産取引とほとんど見分けがつきません。
だからこそ、「プロですら見抜けなかった」事件が次々と起きているのです。
地面師詐欺が起きる理由:登記情報と本人確認の“すき間”
地面師詐欺が成立してしまう背景には、不動産取引特有の“構造的な弱点”があります。
- 登記情報=常に最新・正確とは限らない
- 「登記上の所有者本人かどうか」の確認が難しいケースが多い
たとえば、次のような土地は、地面師の格好の標的になります。
- 長年放置され、誰も住んでいない空き地・空き家
- 所有者が高齢で、施設入所・長期入院・海外在住などで連絡がつきにくい土地
- 相続関係が複雑で、「誰が本当の所有者なのか」外からわかりにくい土地
また、不動産市場は「スピード勝負」の側面も強く、
「他にも買い手がいます」「今月中に決断してほしい」と急かされるなかで、
十分な現地確認や本人確認をしないまま契約を進めてしまうことも、地面師にとって大きな追い風になります。
地面師とはどのような人たち?役割分担された“プロの詐欺集団”
地面師は、単独で動く素人犯ではなく、役割を細かく分担した“プロの集団”であることがほとんどです。
- 偽の所有者役:本物そっくりの身分証で「本人」を演じる
- 情報収集担当(図面師):土地の権利関係・所有者の状況・相続情報などを徹底調査
- 偽造書類のプロ:印鑑証明・住民票・登記識別情報などを精巧に偽造
- 交渉役・法律屋:不動産会社や大企業と価格・条件交渉を行う窓口
- 手配師:偽の所有者役・書類作成役など人材を集める“裏の人事担当”
Netflixドラマ『地面師たち』では、こうした役割がわかりやすくキャラクター化されています。
| 役割 | ドラマ「地面師たち」登場人物 |
|---|---|
| 地面師集団のリーダー | ハリソン山中(豊川悦司) |
| 買主との交渉役・法律屋 | 後藤 義雄(ピエール瀧) |
| 偽造書類の作成 | 長井(染谷将太) |
| 手配師 | 稲葉 麗子(小池栄子) |
| 情報収集する図面師 | 竹下(北村一輝) |
| 偽の所有者 | 谷口 俶恵(小林麻子) |

なお、実際の地面師事件の現場には、依頼人が地面師であることを知らない“本物の”弁護士や司法書士が同席してしまうケースも少なくありません。
偽造書類の精度が高く、人物設定の整合性も徹底されているため、外部からは違和感が見えにくいのです。
つまり、法曹関係者ですら騙されるほど巧妙なのが、地面師詐欺の厄介なポイントだと言えます。
実際に起きた地面師詐欺事件一覧
「地面師なんてニュースの中の話でしょ?」
──そう思う方ほど、ここはぜひ押さえておきたいところです。
地面師は、空き地・高額物件・都心一等地など“おいしい土地”を狙い撃ちし、
実際に不動産業界や上場企業を震撼させる事件をいくつも起こしてきました。
積水ハウス 地面師事件(2017年)
Netflixドラマのモデルのひとつとも言われ、「地面師」という言葉を一気に世間に知らしめた事件です。
・場所:東京都品川区の高級住宅地(旅館「海喜館」跡地、約2000㎡)
・立地:山手線・五反田駅徒歩3分の超好立地
・内容:地面師グループが偽の所有者を用意し、積水ハウスに約55億円で売却したと見せかける
・結果:所有権移転が完了する前に資金を引き出し、巨額の資金が行方不明に
本来の土地所有者は海外在住で、連絡・確認が取りにくい状態でした。
この「所有者不在の空白」を、地面師グループは見事に突いています。
中野区地面師事件(2017年)
2017年、東京都中野区沼袋2丁目の約360㎡の土地が舞台となった事件です。
地面師グループとされる男4人が、土地の所有者になりすまし、偽造の運転免許証などを使って売買契約を締結。
不動産会社から約7,000万円をだまし取ったとして逮捕されました。
比較的規模は小さいものの、都内の住宅地でもこうした事件が起きていることを示す典型例です。
参考ページ:地面師グループか、4人を再逮捕 都内の地主になりすまし土地売却
アパホテル地面師事件(2013年)
アパホテルをターゲットにした「典型的な条件のいい土地」を狙った事件です。
・場所:東京都赤坂の約120坪の駐車場用地
・状況:無借金・空き地という、地面師にとって理想の条件
・手口:所有者がすでに死亡していたため、相続人になりすまして売買契約を締結
・書類:住民基本台帳カードなどを偽造し、本人確認を突破
・被害額:アパホテルから12億円超を詐取
しかし、登記申請の段階で法務局が書類の不自然さに気付き、申請を却下。
その時点で“なりすまし役”は姿を消しており、詐欺行為が発覚しました。
参考ページ:アパホテルから12億円を騙し取った「地面師」驚きの手口
報道されない「水面下の地面師事件」も多数存在
ニュースになるのは、あくまで「氷山の一角」です。
・示談で静かに処理されるケース
・被害を公表すると信用不安につながるため、企業があえて公表しないケース
・個人や中小不動産会社が泣き寝入りしてしまうケース
こうした“見えない被害”まで含めると、実際の地面師被害額は報道ベースを大きく上回ると考えられています。

地面師の手口とその方法:どうやって他人の土地を奪うのか?
地面師は、
「高額・複雑・専門用語だらけ」という不動産取引の特徴を、徹底的に利用します。
とくに、所有者不明地・空き地・都心部一等地・相続絡みの土地は、
「書類さえそれっぽければ外から判別が難しい」ため、もっとも狙われやすい対象です。
偽造書類で“本物の取引”を完全再現
地面師がまず行うのは、「本物の所有者になりすますための準備」です。
・住民基本台帳カード
・運転免許証
・印鑑証明書
・登記識別情報通知(権利証)
・戸籍謄本・住民票 など
これらの書類を精巧に偽造し、
外から見ると「完全に正当な売主」にしか見えない状態を作ります。
そのうえで、
- 買主との価格交渉
- 不動産会社とのやりとり
- 司法書士・弁護士との打ち合わせ
を、ごく自然にこなしながら、
“本物と何も変わらない不動産取引”を演出していきます。
地面師グループの組織的な動き
典型的な地面師グループの流れは、次のようなイメージです。
- ターゲットになる土地の情報を入手(登記情報、相続状況、所有者の居住地などを徹底調査)
- 所有者本人や相続人の“なりすまし役”を立てる
- 偽造書類を用意し、仲介会社や買主と接触
- 弁護士や司法書士にも「普通の取引」と思わせる
- 売買契約・手付金受領・決済を経て、資金を一気に抜き取る
- 資金を分配し、関係者は一斉に雲隠れ
ポイントは、「周囲の人間に“事件”だと気付かせないまま終わらせる」ことです。
だからこそ、事件発覚までに時間がかかり、その間に証拠や足取りはどんどん消えていきます。
売買代金だけでなく「手付金」を狙うパターンも
地面師が狙うのは、決済時の売買代金だけではありません。
もっと早い段階で利益を確定させるため、「手付金だけを奪って逃げる」手口も存在します。
典型的な流れは次のとおりです。
- 数億円規模の“おいしい土地”の売買話を持ちかける
- 「今だけ相場より安く売れる」「他にも買い手がいる」と希少性を強調
- 売買代金の1~2割(数千万円〜数億円)の“高額な手付金”を要求
- 買主はチャンスを逃したくない心理から、短期間で手付金を支払う
- その後、「所有者の都合」「書類不備」「事情の変化」などの理由で話を引き延ばす
- 最終的に連絡が途絶え、手付金だけが消える
途中まで契約が進んでいると、買主側も「ここまで来て被害を公表したくない」と考えがちで、
結果的に表沙汰にならずに終わるケースも多いと見られています。
地面師詐欺に狙われないために:土地所有者が知っておくべきポイント
「大企業が狙われる話でしょ?自分には関係ない」
──そう思っている方こそ、要注意です。
バブル期には「地上げ屋」が物理的な圧力で土地を取得していたのに対し、
現代の地面師は、書類と制度を使って静かに土地を奪いに来ます。
再開発が進むターミナル駅周辺や、放置されがちな相続土地など、
あなたが思っている以上に「標的になり得る土地」は多く存在します。
こんな土地は狙われやすい:所有者側の注意ポイント
不動産取引で「絶対に外してはいけない」チェックポイント
大切な資産を守るために、最低限押さえておきたいのが次の8つのポイントです。
地面師とは?記事まとめ
地面師とは、
他人の土地を自分のもののように装い、不動産取引を偽装して巨額の金銭をだまし取る詐欺グループです。
・ターゲットは、都心の空き地・相続放置地・無借金の高額物件など
・偽造書類と緻密な役割分担で、プロでも見抜きにくい取引を演出
・ときに、本物の弁護士や司法書士すら巻き込まれてしまうほど巧妙
実際の事件から学べるのは、
「登記簿や身分証は“完全な安心材料”ではない」という現実です。
所有者・購入予定者としては、
- 本人確認を「複数の公的書類」で行う
- 対面での確認と現地確認を徹底する
- 最新の登記情報を必ずチェックする
- 違和感を覚えたら、一度立ち止まって専門家に相談する
──こうした基本を押さえることが、地面師詐欺から自分の資産を守る最強の防御策になります。
終わりに:Netflixドラマ『地面師たち』を“現実の入口”として楽しむ
世界的にも話題となったNetflixシリーズ『地面師たち』は、
地面師の世界をエンターテインメントとして描きながらも、詐欺の構造や心理戦のリアリティが非常に高い作品です。
・切れ味のある交渉シーン
・綿密に組み立てられた詐欺計画
・それぞれの事情を抱えた登場人物たちの駆け引き
など、ドラマとしての完成度は高く、「地面師」という存在を知るきっかけとしても優れています。
一方で、仲間が次々と命を落とす展開や、一部の演出は現実の事件よりも過激で、あくまでフィクションとしての脚色も強く感じられます。
「リアルな事件の全てがこの通り」というわけではありません。
とはいえ、
「不動産取引には、これだけリスクのある世界が潜んでいる」
という現実を考えるきっかけとして、『地面師たち』は非常に良い“入口”になるはずです。
ドラマで興味を持ったら、そこで終わらせず、
実際の事件・制度・自分の不動産の状況まで、一歩踏み込んでチェックしてみてください。
それが、あなたの大切な資産を地面師から守る、最初の一手になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | Netflixシリーズ「地面師たち」 |
| 監督・脚本 | 大根仁 |
| 出演 | 綾野剛、豊川悦司、北村一輝、小池栄子、ピエール瀧、染谷将太、松岡依都美、吉村界人、アントニー、松尾諭、駿河太郎、マキタスポーツ、池田エライザ、リリー・フランキー、山本耕史 |
| 原作 | 新庄耕『地面師たち』(集英社文庫) |
| エグゼクティブ・プロデューサー | 高橋信一 |
| プロデューサー | 吉田憲一、三宅はるえ |
| 製作 | Netflix |
| 制作プロダクション | 日活/ブースタープロジェクト |
| 話数 | 全7話(一挙配信) |
| Netflix作品ページ | 地面師たち |
| 著作権表記 | ©新庄耕/集英社 |


