空き家バンク
近年、日本の少子高齢化が進み、都市部への人口集中が加速しています。
その一方で、地方では空き家が増加し、深刻な社会問題となっています。
空き家問題の原因としては、後継者不足や人口減少などが挙げられます。
放置された空き家は、景観を損ねたり、防災上のリスクを高めたりするだけでなく、地域全体の衰退にもつながる恐れがあります。
一方、都市部では、高騰する家賃や住宅価格に悩まされる人が増えています。
自然豊かな環境で暮らしたい、ゆとりある生活を送りたいといったニーズが高まり、地方への移住を検討する人が増えています。
このような状況の中、注目されているのが「空き家バンク」です。
空き家バンクは、地方自治体が中心となって運営しているもので、地域にある空き家の情報を一元的に管理し、移住希望者や空き家を活用したい人に提供するサービスです。
今回は、この空き家バンク制度について、その仕組みやメリット・デメリット、そして活用方法まで詳しく解説していきます。
これまで、
- 家屋の倒壊の恐れ 保安上の危険
- 景観を損なっている
- 衛生上有害・周辺環境への悪影
等の空き家を特定空き家と認定し、自治体は勧告、場合によっては過料も課せられていました。
2023年12月の空家等対策特別措置法の改正によって、
- 1年以上住んでいない
- 管理が不十分
等、特定空家になる可能性のある空き家を管理不全空き家とという区分が新たに設置されました。
この管理不全空き家への指導に対して従わず勧告を受けると、現状、200㎡以下の住宅用地は固定資産税が6分の1軽減を受けられなくなり、固定資産税の負担が大幅(6倍)に増す可能性がでてきました。
空き家バンクとは?
日本では、少子高齢化と人口減少に伴い、空き家の数が増加しています。
地域の景観の悪化、犯罪や防災面でのリスクが高まるなど、さまざまな社会問題が生じています。
この問題に対処するために、空き家バンク制度が導入されました。
空き家バンクは、これらの空き家を活用し、地域の活性化を図ることを目的としています。
空き家バンクの目的
空き家バンクの主な目的は、使用されていない空き家を有効活用することにより、地方の過疎化を防ぎ、地域社会の活性化を促進することです。
空き家をリノベーションし、若者や移住者に低価格で提供することで、新たな住民を地域に呼び込み、地域経済を支えています。
空き家バンクにおける地方自治体の役割
地方自治体は、空き家バンクの運営において中心的な役割を担います。
自治体は、空き家の情報を収集・管理し、これを希望者に提供することで、移住や定住の促進を図ります。
また、補助金の提供や、法的な問題のサポートなど、移住者をサポートするための制度も整備しています。
空き家バンクの仕組み
空き家バンクの仕組みは、
基本的には、空き家や空き地のデータベースを構築し、ウェブサイトなどで公開することです。
利用者はこのデータベースを通じて、興味のある物件情報を検索し、自治体や物件所有者と直接連絡を取ることができます。
参考:JOIN ニッポン移住・交流ナビ
空き家バンクとは?
空き家バンク制度
国土交通省:空き家・空き地バンク総合情報ページ
このプロセスを通じて、空き家のマッチングが効率的に行われます。
空き家バンクを活用するメリット
空き家バンクを利用することには、多くのメリットといくつかのデメリットがあります。
未使用の不動産資源を活用し、新たな住民を引き寄せることで地方の活性化を図ることを目的としています。
しかし、実際に利用する際には、その利点と潜在的な問題点を理解することが重要です。
空き家バンクのメリット:手頃な価格で住まいを手に入れられる
空き家バンクを通じて提供される住宅は、市場価格よりもはるかに手頃です。
空き家が再利用されることで、通常の住宅市場における価格設定を大きく下回ります。
特に、築年数が古い物件や、リフォームが必要な物件は、市場価格よりも大幅に安く手に入ります。
リフォーム費用は別途必要になる場合もありますが、物件購入費自体が安いことで、仲介手数料や登記費用など、初期費用を大幅に抑えられる可能性があります。
また、一部の自治体では、空き家を購入・リフォームする際に、補助金や助成金が支給される制度があります。
これにより、さらに経済的な負担を減らすことができます。
空き家バンクのメリット:個性的な住まいに出会える
空き家バンクには、一般的な住宅市場では見つけることが難しい、個性的な特徴を持つ住宅が多く含まれています。
庭付きの一戸建てなど、都市部ではなかなか手に入らない広々とした敷地を持つ物件が見つかるかもしれません。
ガーデニングやDIYなど、さまざまな趣味を楽しむことができます。
古民家や特異な建築様式の家など、ユニークな物件に出会えるチャンスがあります。
空き家バンクのメリット:地域貢献につながる
空き家バンクの利用は、地域社会への積極的な貢献となります。
空き家が住居や店舗などに生まれ変わることで、地域に人が集まり、活気が生まれます。
地域住民との交流が深まり、新たなコミュニティを築くきっかけにもなり、地域のイベントに参加したり、ボランティア活動を行ったりすることで、地域の一員としての意識を高めることができます。
空き家を活用することで、地域の活性化に貢献し、地方創生の一環として評価されています。
空き家バンクのメリット:移住を検討している人にとってのメリット
移住希望者にとって、空き家バンクは新しい地域へのスムーズな移行を可能にします。
事前に住居を確保できることで、移住に伴う不安を大幅に軽減できます。
一度に複数の物件情報を比較検討できるため、移住先の住まい探しをスムーズに行うことができます。
また、自治体のサポートを受けながら、移住に関する相談も可能です。
空き家バンクを活用するデメリット
空き家バンクは、地域活性化や空き家の有効活用を目的とした制度として注目されています。
しかし、魅力的な制度の裏側には、利用者にとって見過ごせないデメリットも存在します。
空き家バンクのデメリット:新築や築年数が浅い物件は多くない
空き家バンクに登録される物件は、主に長期間使用されていない古い物件が多く、新築や築浅の物件を見つけることは困難です。
新築や築浅の物件は、一般的に不動産会社を通じて売買されることが多く、空き家バンクに登録されることは少ないです。
空き家バンクのデメリット:修繕やリノベーションが必要な物件が多い
多くの空き家バンクの物件は、長期間手つかずであったため、屋根や外壁、内装など、建物全体が老朽化など、居住に適する前に大規模な修繕やリノベーションが必要です。
給排水設備や電気設備などが故障している場合もあり、高額なコストがかかることがあり、購入後の追加投資が必要になります。
空き家バンクのデメリット:掲載されている物件数が限られる・少ない
空き家バンクの物件は、地域によっては数が限られており、選択肢が少ないことがあります。
特に人気の地域や条件の良い物件はすぐに売れてしまう、そもそも見つからないことが多いです。
空き家バンクのデメリット:地域コミュニティへの適応が必要
移住者は新しい地域のコミュニティに適応する必要があります。
地元の慣習や文化に馴染むまで時間がかかることがあり、一部の人にとっては挑戦となる場合があります。
地域住民との良好な関係を築くためには、積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。
空き家バンクのデメリット:維持管理に関するコストが発生する
空き家は定期的な維持管理が必要であり、これには年間を通じて一定のコストがかかります。
項目 | 説明 |
---|---|
固定資産税 | 空き家所有者には固定資産税が課せられます。 |
修繕費 | 建物の老朽化に伴い、定期的な修繕が必要になります。 |
光熱費 | 空き家を維持するために、光熱費がかかります。 |
また、放置することで建物が劣化し、さらなる修繕費用が発生するリスクもあります。
空き家バンクのデメリット:資産価値が上がりにくい
空き家バンクの物件は、立地や状態によっては資産価値が上がりにくいことがあります。
リフォーム費用をかけても、必ずしも物件の価値が上がるわけではありません。
投資としてのリターンを期待する場合、市場動向をよく理解する必要があります。
空き家バンクの利用方法・流れ
「あの古民家を自分だけの空間にしたい」
「田舎暮らしをしてみたい」
そんな夢を持っているあなたへ。
空き家バンクは、そんな願いを叶えるための第一歩となるかもしれません。
空き家バンクを利用する際のプロセスを理解することは、効率的に物件を探し、適切な住まいを見つける上で重要です。
空き家や空き地を探求し、購入や賃貸の選択肢を検討する際の流れを紹介します。
空き家バンク・利用の流れ:①空き家バンクを探す
最初のステップは、地方自治体や専門のウェブサイトが提供する空き家バンクのデータベースを検索することです。
多くの地域では、オンラインで簡単にアクセスできるリストがあります。
空き家バンク・利用の流れ:②気になる物件の問い合わせ
リストから気に入った物件を見つけたら、提供されている連絡先を通じて、さらに詳細な情報を問い合わせます。
この段階で、価格や物件の状態について初期の質問を行います。
空き家バンク・利用の流れ:③見学
実際に物件を訪れて見学することが重要です。
物件の現状を確認し、リノベーションが必要かどうか、またその地域の環境を体感します。
空き家バンク・利用の流れ:④契約
すべての条件が合意に達したら、売買契約を結びます。
法的な書類の準備や、場合によっては専門家の介入が必要になることもあります。
各ステップでしっかりと情報を収集し、慎重に進めることが成功の鍵です。
空き家バンクの成功事例・利用者インタビュー
少子高齢化が進み、空き家問題が深刻化する日本。
しかし、空き家は単なる負の遺産ではありません。
古民家をリノベーションしてカフェを開業したり、海が見える家に移住したりと、新しい可能性を秘めた資源なのです。
そんな空き家バンクの成功事例や、実際に空き家バンクを利用して理想の暮らしを実現した人々のインタビューを、各空き家バンクから抜粋し紹介します。
空き家バンク・利用者インタビュー:空き家を購入された「佐藤さん」
湯本さんから空き家を購入した佐藤さん。佐藤さんは鳥羽市で映像・アニメーションスタジオ「イェンスの塔」を運営し、クリエーターとして活躍されています。実は空き家を購入されるのは今回で2度目。ご自身でリノベーションされたことで、引き継がれた湯本さんの空き家はガラッと雰囲気を変えました。現在、リノベーションされた家はテナントで貸し出し、「筋膜リリース&ボディセラピーのお店 ねこのみみ」として活用されています。
三重県鳥羽市空き家バンクより
空き家バンク・利用者インタビュー:移住を検討されている方へのメッセージ
空家なのでリフォームをするつもりで購入を検討していましたが、笠間市は空家バンクに登録されている物件の修繕費の補助があるので利用しやすかったです。
家庭菜園程度にブロッコリーや大根なども育て始めています。まだうまく育っていませんが、おいしい野菜を自分で育てられるようになるのが楽しみなので、そういった生活ができるのも移住の醍醐味の一つだと思います。
また、落ち込んだときに広い空を見たいと思っても都会ではなかなか見えませんが、今はいつでも広い空を見れるので快感です。
茨城県笠間市公式ホームページ
空き家バンク・利用者インタビュー:田舎暮らしで困ったこと
実際に暮らしてみて、田舎暮らしで困ったことはありますか?
正直、思い当たることって特別ないんですよね。
強いて言えば、この辺は近所付き合いが必須なので、イベントごとには、最初から最後まで参加することくらいかな。
生活は、田舎でも車さえあれば何とでもなりますよ(笑)
車を少し走らせればスーパーやドラックストアもあるし、Amazonも翌日配送だったりと、意外と早く届くので、買い物も苦労はないです。
むしろ、都会にいた頃のような高い家賃も掛からず、お店に飲みに行く機会も減って無駄使いも減り、会社勤めもなくなって人間関係も楽になり、結果的にストレスフリーになりました!
かといって、月1回くらいの頻度で、仕事の打ち合わせで東京に行ったり、月1、2回は駅前で仲間たちと飲んだりと、メリハリのある生活を満喫しています。
猫3匹も放し飼いにしていますが、モグラやネズミを捕ってきたりと本能のままに活き活きと、ここでの生活を楽しんでいるようです。
福島市空き家バンク
空き家バンク・利用者インタビュー:空き家バンクを利用しようと思ったきっかけ
空き家バンクを利用しようと思ったきっかけはなんですか?
「家探しをしていると、土地はなかなか条件に合う場所がありませんでした。そんな中、もともと古着や骨董といった古いものに興味があったので、空き家をリノベーションして住むのもありだと思い、不動産屋さんや定住促進係が発行する不動産情報もよく見ていました。その中で、空き家バンクに、場所と雰囲気がよさそうな物件が2件出ていたので、まずは実際に見てみたいと思い、利用登録しました」
空き家バンク制度の良さは?
「所有者さんと直接やりとりができるので、やはりお互いの顔が見える安心感が一番だと思います。買い手としては、所有者さんの思いが伝わるし、所有者さんとしてもどんな人が住むのか直接話すことで分かる部分もあるので、そこが良さだと思います。また、購入まで至らなかった物件でも、人とのつながりができることで、不用な小物などをいただいたりもしました。ただ、素人同士の取引になるため物件の状態を見極めるのが難しく、買ってから予想以上に改修費用がかかりました。可能であれば買う前に建築関係の人などに見てもらった方がいいかもしれません」
長野県大町市移住情報総合サイト
空き家バンク・利用者インタビュー:今、野菜づくりがとても楽しい!!
私の場合は、3年間いろいろなところの空き家バンクを見て回りました。
修繕箇所が多いところや臭いの気になるところなどさまざまありました。
今住んでいるところは息子がインターネットで探してくれて、特に臭いなども気にならない物件でした。
田舎暮らしの成功のカギは、近所づきあいだと思います。
新潟県村上市公式ウェブサイト
空き家バンクに関するよくある質問・Q&A
「空き家バンクって、実際どうなの?」
「どんな物件があるの?」
「利用するにはどうすればいいの?」
空き家バンクについて、こんな風に思っていませんか?
空き家バンクに関するよくある質問をまとめました。
よくある質問:空き家バンクの利用に費用はかかりますか?
登録と情報の閲覧自体は大抵無料ですが、実際に物件を購入または借りる際には、通常の不動産取引と同様に費用が発生します。
よくある質問:空き家バンクの物件を購入する際の注意点はなんですか?
物件の状態がさまざまなため、購入前に必ず現地を訪れ、実際の状態を確認することが重要です。
また、修繕が必要な場合のコストも考慮する必要があります。
よくある質問:空き家バンクの物件はどのようにして見つけることができますか?
地方自治体のウェブサイトや専用のポータルサイトで情報が提供されています。
利用希望者はこれらのプラットフォームを通じて検索し、希望に合った物件を探すことができます。
よくある質問:空き家バンクを利用するメリットはなんですか?
空き家バンクを利用することで、手頃な価格で不動産を手に入れることができるほか、地域の活性化に貢献することもできます。
また、独特な物件や地域に根ざした生活を求める人にとって魅力的な選択肢を提供します。
空き家バンク:記事まとめ
空き家バンクは、空き家や空き地を活用するための効果的なシステムであり、地域の再生と活性化に寄与する多くの可能性を持っています。
この記事では、空き家バンクの基本的な概念から利用方法、メリットとデメリット、さらに成功事例までを網羅的に紹介しました。
空き家問題を解決し、新たな住民を地域に引き寄せるための一助となることを目的としています。
利用者の実体験を通じて見えてきた実際の効果や、地方自治体がどのようにこのシステムを支援しているかの具体例も掲載しました。
これらの情報が、空き家バンクの利用を検討している方々にとって有益なガイドとなることを願っています。
空き家バンク・利用者インタビュー:神奈川県から広島県尾道市因島へ
因島空き家バンクの物件に引っ越すまでの費用と内訳を教えてください。


●物件価格+登記など諸経費、110万円くらい。
●修繕費+引越代および交通費、850万円くらい。
因島空き家バンク(広島県尾道市)